別れ際に

1時間程、風に吹かれていただろうか?おじさんがそろそろと時計を見た。私は心に嘘をついて「そうだね。」と終わりの時間が来ることを納得させた。

立つと私のお尻はずっと座っていたガードレールの硬さに負けて痛かった。

(夢中で気が付かなかったなぁ)

私はJRの原宿駅へ向かい、おじさんは途中のメトロに乗ると言った。少しだけ一緒に歩いて、原宿駅まで送ってくれたらもう少し一緒に歩けたのになぁ。と思った。

おじさんが乗るメトロの乗り場へと続く階段は洞穴に続いてるみたいに長かった。長くて深いから強く風が吹いていて、おじさんはそれに逆らうことなく階段を降りていった。

一瞬、私は迷った。いろいろな想いが心を駆け巡った。

まだおじさんの腕を掴める場所にいた。その腕を引っ張って『また逢える?』と言いたかった。もっと言えばハグをしたかった。もっともっと言えばまだ一緒に風に吹かれて居たかった。

もう逢えないだろう。。。私が今伝えなければきっともう逢えない。少ない経験値だけどそれは分かった。

私は伝えることをしなかった。

臆病者だから。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です