秋の人と最期の夜

柔らかい夜

振り返ればそれが秋の人と過ごす最初で最期の夜になった

まだ陽は長くて夕方までセックス未満のことをして抱き合っていた

秋の人は日が暮れると夕飯を食べに行こうと誘い、賑やかな都会の街に二人で繰り出した。彼は私に聞くことなく肉か寿司を食べると決めていて、随分と強引だなと思いつつも、ずっと握ってくれた手の温もりがそれを帳消しにした

お寿司屋さんはとても混んでいて、お寿司屋へ行く前にもらったチラシの韓国料理屋さんへ行った

全然お客さんの以内お店だったのに思った以上に美味しい料理ばかりで、彼はお店のコストのことを語り、私はそんな話を聞き流し、ヘラヘラと笑っていた

ホテルに帰ってまた抱き合った

過去の好きな人の話、仕事の話、のんびり海外旅行でも行きたいという話をした

『究極、nanaとはセックスせんでもええんや』

と言っていたけど、柔らかい夜に二回そして朝に一回、計三回ひとつになった。私は私の躰で欲情されるのがうれしかった

シャワーを浴びていると無理やりユニットバスに入ってきたり、ご機嫌な時にでる鼻歌が音痴だったり、秋の人がとても愛おしかった

ホテル代も食事代も『与えることはあっても奪うことはしない』の言葉通り秋の人が全て支払いをした

チェックアウトの12時にホテルの前で別れた

私は家に帰る前にデパートによって秋の人へのお礼のプレゼントを選んだ

勝負の時に着ると言っていた紺のスーツに合わせて絹のポケットチーフを選んだ。白地に紺色の縁どりがされた水玉のポケットチーフ

とても似合うと思った

私はご機嫌にプレゼントを選んだ

そのプレゼントが渡せないなんて、もう逢えないなんて想像もせずに

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