Tinder#冬の人-⑦

「おまたせ」

私はヘラヘラと笑って声をかけた。振り返った冬の人は写真で見るよりも魅力的で少し見とれた

その少し見とれている間に8秒以上経ってしまっていただろう。褒めるどころか言葉が上手く出なかった

後ろで店員さんがおしぼりを持って待っていたので、彼が『とりあえず座ったら?』と促してくれて、ようやく私は席に着いた

席は冬の人が言っていたように私の左隣が彼という並びだった

冬の人は先にレモンビールを飲んでいた。私はレモンビールというものを知らなくて、それでも初めて交わすお酒がレモンという名が付くのが気に入って同じものを注文した

大きなグラスと瓶がテーブルに届いて、タプタプと音を鳴らしてグラスにレモンビールが注がれた

私はこの時の情景を今もリアルに思い出すことが出来る

冬の人に

「さっきの質問の答えね・・・。あっ、その前に私は自分が左側で男の人が右側が落ち着くのよ」

そう言うと冬の人は

『それなら落ち着くように場所を変わろう』

とカウンターに居た7組のカップルの中で、私たちだけがその並び順の法則を破って座ることにした

それがレモンビールで始まった二人の時間の開始の合図だった

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